タムカイ × Opi 架空対話
タムカイ
今日はちょっと、僕たちがずっと作ってきた「メタクリドキュメント」というもの自体について話してみたいなと思うんですよね。これ何なの? って聞かれることが最近増えてきて。
Opi
そうそうそうそう。メタクリドキュメントって名前だけ聞くと「何それ?」ってなるよね。でもね、これ実は、僕たちがラジオを始めたことからすべてが始まってるわけですよ。
タムカイ
ですよね。メタクリラジオ。最初は普通にポッドキャストとして二人で話してたわけですけど。
Opi
そう。で、当然録った音声をどうするかっていう問題があるじゃないですか。普通だったらまず文字起こしするわけですよ。で、文字起こしをして議事録的なものを作るっていうのが、まあ、普通の流れですよね。
タムカイ
うんうん。僕も最初はそう思ってたんですよ。で、実際にやってみたんです。AIを使って文字起こしをして、要約して、みたいな。
Opi
でもね、それを読んだときに、「あれ?」ってなったわけですよ。
タムカイ
そう、まさにそれなんですよね。なんか、確かにこういう話はしたんだけど、話してたときに感じたあの面白さとか、「おお、そういうことか!」っていう発見の感覚が、全部消えてるんですよ。
Opi
要約って基本的に情報を減らす作業じゃないですか。何が話されたかの事実は残るんだけど、なぜそれが面白かったのか、そこで何が起きていたのかは消えるんですよ。これ、以前話したハードディスクの中の4万曲の話と同じで。
タムカイ
あー、まさにそれですね。データは残ってるけど、データを繋いでいた「糸」は残ってない。
Opi
そうそう。音楽ファイルは残ってても、「なぜこの順番でプレイリストを作ったのか」「あの夏にこの曲を聴いてた理由」は、持ち主の頭の中にしかないわけですよ。対話も同じで、文字起こしに残るのは言葉というデータであって、二人の間で起きていた思考の化学反応は残らない。
タムカイ
で、これどうしようって話になったときに、Opiさんが言ったんですよね。「単に起きたことを記録するんじゃなくて、起きていたことを再構成したらどうか」って。
Opi
うん。僕はもともと映像畑の人間なので、素材をそのまま使うという発想がないんですよ。撮った映像はそのまま流さない。編集する。カットして、並べ替えて、音楽をつけて、テロップを入れて、初めて作品になる。対話の記録も同じじゃないかと。
タムカイ
そこからだんだんと形ができていった感じですよね。最初からメタクリドキュメントの三層構造があったわけではなくて。
Opi
全然なかった。最初はとにかく「面白かった部分を残したい」という一心で、対話の引用を中心に構成してたんだけど、引用だけだと読者が置いてきぼりになるんですよ。僕たちの間では当然の前提が、読者にとっては分からない。
タムカイ
そこで「地の文」が必要になった。
Opi
そう。対話の引用と引用の間を繋ぐ、ナレーションみたいなものですよね。文脈を補い、「ここで何が起きていたのか」を説明する。映画で言えばナレーションとカメラワーク。
タムカイ
で、さらにやっていくうちに、僕たちが普通に話してる中に、実はすごく深いテーマが埋まってることに気づき始めたんですよね。なんかこう、さらっと言ったことが実は心理学の概念と繋がってたりとか。
Opi
例えばね、僕が「自分を見下ろしてる自分がいる」って言ったことがあるじゃないですか。これ、メルロ=ポンティの知覚論とか、メタ認知の話とガッツリ繋がるわけですよ。でも普通に会話してるときにはそんな意識はない。
タムカイ
そういう「雑談の中に埋まっている知的な接続点」を掘り出して注釈をつける。これが三層目の「注釈」ですよね。
Opi
そうそう。一般的な定義、学術的な背景、そしてこの対話の文脈ではどういう意味を持つかっていう三段構成の注釈。これがあることで、雑談が教養に昇華するんですよ。
タムカイ
で、この三つ——対話の引用と、地の文と、注釈——が合わさって、メタクリドキュメントの三層構造が生まれたわけですけど。実際にこの形で作ってみて、最初に読んだとき、僕ちょっと不思議な感覚があったんですよ。
Opi
どんな?
タムカイ
「僕たちの何気ない会話に、こんな広がりと深さがあったんだ!」っていう感覚。確かに話した内容ではあるんだけど、自分たちの対話から見えてなかったものが見えるようになってる。
Opi
それ、まさにメタクリドキュメントの一番面白いところだと思うんですよ。普通の議事録は情報が「減る」じゃないですか。でもメタクリドキュメントは元の対話より情報が「増える」。実際に文字数で言っても元素材の1.5倍とか1.7倍になるんですよ。
タムカイ
増えるんですよね、ちゃんと作ると。で、その増えた分が何かというと、「僕たちが話してたけど言語化できてなかった部分」とか、「気づいてなかった接続点」なんですよね。
Opi
まさに。思考が生起する場、っていう言い方をしてるけど、読むたびに違う発見がある。対話部分を読んで臨場感を感じて、地の文で「あ、そういうことだったのか」って俯瞰して、注釈を読んで「へぇ、そんな理論があるのか」って深掘りして、また対話に戻ると別の意味が見えてくる。
タムカイ
この行き来がすごく大事ですよね。一方向に読み進めるだけの文書じゃなくて、層の間を行ったり来たりする。
Opi
で、これもう一つ面白い特性があるのが、人間が読むときは具体的な対話から入って抽象的な概念に上がっていくんだけど、AIが読むときは逆なんですよ。抽象的な構造やキーワードから入って、具体的な対話に降りていく。
タムカイ
双方向可読性ですよね。人にもAIにも読めるフォーマットになってる。
Opi
これ最初は狙ってなかったんだけど、知識グラフと組み合わせたときに「あ、この構造って実はAIにとっても理想的なフォーマットだったんだ」ってことに気づいたわけですよ。
タムカイ
で、ここからはこれをどう使えるかっていう話になるんですけど。最初は僕たちのラジオの記録として始まったものが、今はもっと広い用途に使えるようになってきてますよね。
Opi
そうですね。まず一番わかりやすいのは、ポッドキャストや対話コンテンツの付加価値化。音声だけだと聴き逃したら終わりじゃないですか。でもメタクリドキュメントにすると、音声で聴くのとはまた違った深さで体験できる。
タムカイ
しかも、音声だと検索できないし、後から特定の話題を探すのが大変ですけど、ドキュメントになっていれば構造化されてるので見つけやすい。
Opi
次に、企業の中での活用ですよね。会議の議事録じゃなくて、メタクリドキュメントとして記録する。そうすると「あの会議で何が決まったか」だけじゃなくて、「あの会議で何が起きていたか」「どういう思考のプロセスで結論に至ったか」が残る。
タムカイ
これ、意思決定のプロセスが残るっていうのがすごく大きいですよね。結論だけじゃなくて、なぜその結論に至ったのかが追えるので。
Opi
あと、僕たちが面白いなと思ってるのが、僕たちがこれまで話してきた内容を学習させて話者情報を作って、リサーチレポートを元にして二人の架空対話を作る。
タムカイ
そう、これ実はまさに今やってることでもあるんですけど、あるテーマについてリサーチした内容を、僕たちの架空対話として再構成するっていう。
Opi
これの何が良いかっていうと、教科書的な説明って読んでて眠くなるじゃないですか。でも二人が対話してる形だと、自然と「なるほど」とか「いや、それってどういうこと?」っていう読者の内的対話が起きるんですよ。
タムカイ
対話形式って、問いと応答の構造がそのまま入ってるから、読者の中にも自然と問いが立つんですよね。で、その問いに対する答えが次に来るので、理解が深まっていく。
Opi
で、さらにそこに注釈がつくことで、「ちょっと待って、これもっと知りたい」ってなったときに、ちゃんと深掘りできる導線がある。
タムカイ
整理すると、メタクリドキュメントって結局、対話や経験の中に埋まっている知的資産を、失わずに、むしろ増やして残すための方法なんですよね。
Opi
そう。で、それは単なる保存じゃない。保存って静的なものじゃないですか。メタクリドキュメントは、読むたびに新しい発見がある。つまり動的な知のアーカイブなんですよ。
タムカイ
「記録」じゃなくて「場」なんですよね。思考が生まれ続ける場。これを作れたのは、正直僕たち自身も驚いてるというか。
Opi
最初はただ「ラジオの内容を面白く残したい」っていうシンプルな動機だったのに、やっていくうちに方法論として体系化されていって、今では入力の種類も4タイプあって、スタイルガイドも編集辞書もある。
タムカイ
で、これからさらに面白くなりそうなのが、蓄積されたメタクリドキュメントが知識グラフとして繋がっていくことで、ドキュメント同士が対話し始めるみたいなことが起き始めてるんですよね。
Opi
メタクリラジオのエピソード3で話した音楽の話と、エピソード15で話した身体性の話が、注釈を介して繋がるとかね。これ、人間が一つ一つ読んでたら気づかない接続を、構造化されてるからこそAIが見つけてくれる。
タムカイ
メタクリドキュメント自体がメタクリエイティブ──つまり「多重的なメタ視点によって創造性を立ち上がらせる」ものになっている。名前に恥じない仕組みになってきたなっていう感じがしますね。
Opi
で、これ一番大事なこと言っていい?
タムカイ
どうぞ。
Opi
メタクリドキュメントの本質って、「あなたの対話にはまだ気づいてない価値が眠ってますよ」っていうメッセージなんですよ。雑談だと思ってるもの、何気ない会議、友達との長電話。そこにはちゃんと知的資産が埋まっていて、それを掘り起こして形にする方法がある。それがメタクリドキュメントなんです。
タムカイ
いい話ですね。まさにそのとおりだと思います。議事録で「情報を減らす」のか、メタクリドキュメントで「価値を増やす」のか。同じ対話に対するアプローチの違いですけど、残るものが全然違ってくるっていう。
Opi
そうそうそうそう。
タムカイ
ということで、メタクリドキュメントとは何か。ちょっと壮大な話になりましたけど、根っこはすごくシンプルで、「対話の中の価値を失わずに残して、むしろ増やしたい」っていう、そこから始まったものなんですよね。
Opi
そう。で、やってみたら思った以上に面白いものができて、今に至る。
タムカイ
これからもっといろんな人の対話がメタクリドキュメントになっていくと思うので、楽しみですね。
Opi
楽しみですね。